2009年11月02日

夜の門  第38話

”羽根付き鞠”は、初雪の日以降猟犬達を遊び相手として認識したらしい。
主人は城館の敷地内であればどこにいようと全く関知せず、彼(彼女?)の好きなようにさせている。「邪魔くさい重石がなくなって清々する」とマルティンにこぼしてもいた。

異郷の鳥のように美しく、気の利いた悪戯をしかけてくる相手。猟犬達も同じ仲間とばかり遊ぶ日常に飽き飽きしていたのかもしれない。
雪の中でいつまでも転げまわっている。

ーすっかり仔犬に戻っているであるな

自分のそばに控えているときは殆ど見せないシュトゥルムとドラングの表情。事情を知らない者が見たら二頭係りで金色の鳥を狩っているように見えそうな”本気”で遊ぶ犬の顔だ。

しかし、どんなに遊びが白熱していても”羽根つき鞠”は主人の呼び出しには忠実に応えている。
主人が呼べば大慌てで城館に飛んで戻り、主人のいるであろう部屋の窓を引っかく。程なくして主人が窓を開けて招き入れる。ご用を仰せつかると、まだ窓から飛び出して仕事を果たす。仕事が終わればシュトゥルムとドラングの所に戻る。

ー聖堂教会の神父は、使い魔の携行が許されているのであるか?

生憎とクロウリー家の地所は東方正教の勢力圏であるため、詳しい事情はわからない。
異端と正統を病的なまでに分けるという宗派が、何故?

若君は首を傾げる。



神父の部屋の窓に小石がぶつかるような音がした。
神父は窓を開けると、太った鼠の死骸を抱えてティムキャンピーは飛び込んでくる。
気の進まない様子で主人の目の前にそれを置こうとすると・・・・・・
「汚ねェものを直に置くな!そこの皿に置け」

いつもなら怒鳴られる所だが、ひそひそ声で自分を叱るだけの主人。

この部屋に滞在することになったご婦人の機嫌を損ねないように配慮しているつもりらしい。

婦人は婦人でも残念ながら人ではなく、老男爵の許しを得て譲り受けた食人花の若い雌花。
仲間と離れ離れになり、いきなり「お前の主人だ」と言い張る胡散臭い男と二人きりにされ。

恐怖と疑いで身を強張らせ、雌花はキイキイ鳴いてクロスを威嚇している。

「さあ、お嬢さんにいいもの差し上げよう」

おぼこ娘を口説くときと全く同じ声音で食人花に話しかける。

鼠の乗った皿を持つ主人の手が震えているのを見なかったことにして、ティムキャンピーは遊び仲間の元に戻っていった。
posted by 秋山ねぃ at 15:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 夜の門 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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